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競売の3点セットの読み方を徹底解説【物件明細書編】

3点セット現況調査報告書編①

今回は競売物件の調査に欠かせない3点セットの読み方について解説します。

3点セットは裁判所が公開している競売物件の資料であり「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」という3つの資料で構成されています。

3点セット 物件明細書

初めて3点セットをダウロードすると数十ページというボリュームに圧倒されるかもしれませんが、見るべきポイントさえ押さえていれば読むのにそれほど時間はかかりません。

慣れてしまえば3分程度で物件の概要が分かるようになります。

今回はそんな3点セットの中でも特に重要な「物件明細書」の読み方を詳しく解説します。

3点セットを読まずに競売に参加するというのは目隠した状態で車の運転をするようなものです。危険極まりないですね。

これから競売に挑戦しようという方は是非今回の記事を最後まで読んで、物件の良し悪しを見分けられるようになりましょう。



3点セットをダウンロードする

3点セットダウンロード

981.jpを使っているなら、物件の個別情報ページの下部から3点セットをダウンロードできます。(要無料会員登録)

おやつ
おやつ
もちろんBIT競売公売.comからでもダウンロード可能です

ちなみに、981.jpはすでに裁判所が公開を終えている過去の3点セットについても、有料会員になるか個別に代金を支払うことでダウンロードできます。

ネット上で見られる3点セットはプライバシー保護のため個人名が黒塗りになっています。

個人名を確認したい場合は、裁判所の閲覧室に出向いて紙の資料を読みましょう。

3点セットの表紙

表紙

3点セットの先頭には競売のスケジュール固定資産税物件目録などが記載された表紙がついています。

スケジュール

3点セットスケジュール

「入札期間」「開札期日」「売却決定期日」「特別売却実施期間」の日時が記載されています。

これらは981.jpの物件情報ページにも書かれている内容ですが、念のためもう一度確認しておきましょう。

固定資産税・都市計画税の表示

固定資産税

「物件番号」「売却基準価額」「買受可能価額」「買受申出保証額」そして直近の「固定資産税」「都市計画税」の金額が書かれています。

固定資産税と都市計画税は毎年払い続けることになる税金なので、運営経費として必ず把握しておきましょう。

物件目録

競売の対象になっている物件の基本情報が記載されています。

ここで必ず確認しておくべきなのは、土地と建物の持分が全て手に入るかどうかということです。

物件情報の最後が空欄であれば何の問題もありません。

その物件は落札すれば100%の所有権が手にはいります。

また、物件情報の最後に持分が書かれていても合計で100%になっていれば特に問題ありません。

例えば上の図の場合、持分が「3分の2」と「3分の1」で分かれていますが、合計で1になるので問題はありません。

一方、上の図の場合、持分「2分の1」しか記載されていないので、落札しても完全な所有権が手に入りません。

こういった物件は避けるようにしましょう。

なお、公衆用道路であれば持分が100%でなくても問題ありません。

物件明細書

物件明細書

表紙の次は今回のメイン「物件明細書」です。

物件明細書には競売物件の権利関係が記載されています。

物件を落札して買受けたとき、あなたが引き継がなければならない他人の権利などです。

物件明細書は基本的に1~3ページ程度にまとめられており、3点セットの中ではボリュームが少なめですが、情報の重要度は非常に高いです。

特に権利関係は物件の見極め判断の大きなポイントになるので、一言一句漏らさずに確認するようにしましょう。

1.不動産の表示

ここは基本的に「別紙物件目録記載のとおり」としか書かれていません。

2.売却により成立する法定地上権の概要

土地と建物がセットになっている物件であれば、ここは「なし」となっているはずです。

というか、ここが「なし」以外の物件はアウトです。入札してはいけません。以上!

以下補足(興味がなければ読み飛ばしてOK)

法定地上権

競売によって土地と建物の所有者が別々になった場合、建物の落札者が困らないよう法律によって自動的に設定される地上権(他人の土地の上に建物を所有できる権利)のことです。

もし法定地上権というものがなかったとすると、せっかく建物を落札しても土地の所有者から「建物を取り壊せ!」と言われたら従う他ありません。

そんな建物は誰も入札したがらないので法定地上権という制度があるわけですね。

似たような土地利用権に「借地権」があります。

どちらも地代の支払いが必要なことは変わりませんが、「借地権」は建物を建て替える際に地主への承諾が必要なのに対して、「地上権」は特に承諾を必要とせず建て替えられるため「地上権」の方がより強い権利と言えます。

どちらにしても土地の所有権が無ければ売却時には売りづらいので、初心者のうちは土地がついてこない物件は避けるようにしましょう。

3.買受人が負担することとなる他人の権利

ここには買受人(競売で物件を手に入れたあなた)が承継しなければならない他人の権利(あなたにとっては義務)が記載されています。

ここに書かれている内容は超重要です。

もしご自身が物件を使用する目的で競売に参加するのであれば、この欄は「なし」となっているものをオススメします。

この欄に賃借権に関する記載がある場合、その賃借権は非常に強い権利です。

例えば、賃借権末尾に「上記賃借権は最先の賃借権である」との記載がある場合、落札後もその賃借人に物件を貸し続けなければならないことを意味します。

最先の賃借権

物件に抵当権が設定される(借金の担保にされる)前からの賃借権です。この場合、賃借人は競売後も退去に応じる必要がありません。
(これを競売用語で「買受人に対抗できる」と言います)
このように「賃借人が買受人に対抗できるかどうか」は原則として「抵当権設定前から部屋を借りているかどうか」で決まります。

最先の賃借権の場合、家賃・契約期間・敷金・保証金・その他従来の契約書の諸条件は全てあなたに引き継がれます。

賃借人が前の所有者に敷金等を預けていた場合、退去時の敷金の返還義務はあなたが負うことになります。

おやつ
おやつ
預かっていない敷金を返さなければいけないのは理不尽に思えますがそういう決まりなので仕方ありません。敷金の分、売却基準価額は安く設定されています。

最先の賃借人は裁判所の「引渡命令」の対象外なので、退去してもらいたい場合は自分で交渉することになります。

ただ、アパートなどは最初から賃貸目的で落札しているはずなので、家賃や敷金が納得いく金額であればそのまま貸し続けても特に問題はないでしょう。

購入後すぐに家賃収入が入るのでおいしい物件とも言えます。

ただし、一つ注意点があります。

それは賃借人が債務者関連だった場合です。

競売でよく見かけるのは「債務者本人が代表を務める法人が賃借人になっている(もしくはその逆)」といったものです。

この場合、物件明細書に記載されている家賃が競売後も支払われるかは怪しいところです。

可能であれば、入札前に債務者本人から競売後どうするつもりなのかを確認しておくのが良いでしょう。

4.物件の占有状況等に関する特記事項

抵当権設定後の賃借権はこちらに記載されます。

この場合、賃借人は「買受人に対抗できない」のであなたは退去を命じることができます

ただし、賃借人保護の観点から、建物の明け渡しは代金納付から6カ月間猶予されます。

なお、最先の賃借権と異なり、あなたに敷金の返還義務は生じません。

もちろん退去させずに新たに賃貸借契約を結び直すことも可能です。

収益物件であれば、賃借人自身に問題が無ければそのまま住み続けてもらうのが良いでしょう。

所有者が住んでいる、もしくは空き家の場合は「本件所有者が占有している」と記載されます。

おやつ
おやつ
居住中か空き家かはこの後の現況調査報告書で分かります

「同人の占有権原は使用借権と認められる」と書かれている場合は、所有者以外の者が無償で住んでいることになります。(だいたいは所有者の親族だったりします)

所有者や使用借人には6カ月間の明け渡し猶予が無いので、代金納付後すぐに退去させることが可能です。

しかし、実際には即退去を求めるのは現実的ではないので交渉して退去日を決めることになるかと思います。

なお、次のような記載がある場合は要注意です。

  • 「○○が占有している。同人の占有権原は認められない。」
  • 「○○が占有している。同人の賃借権は、正常なものとは認められない。」
  • 「占有者は不明である。占有者の占有権原は買受人に対抗できない。」
  • 「○○が占有している。同人が留置権を主張するが認められない。」

このような物件は占有者と揉める可能性が高いです。

現地調査で近隣住民や占有者本人から詳しい事情を聴くか、それができないならそもそも入札を避けた方が良いでしょう。

5.その他買受の参考となる事項

ここまでの項目には該当しないけれども買受人にとって重要な情報が書かれています。

その内容は次の通り多岐にわたります。

  • 他人の土地を一部利用している
  • 他人に土地を一部利用されている
  • 隣地との境界が不明確である
  • 隣地との境界争いがある
  • 接道義務を満たしていない
  • 共有持分である
  • 借地権に関するあれこれ
  • 敷地利用権がない
  • 土地明渡建物収去訴訟がされている
  • 建物に重大な瑕疵がある
  • 敷地内で他殺・自殺・孤独死があった
  • 地代、管理費の滞納がある

なお、記載されている内容が理解できない場合は絶対に放置せず、入札前に調べて疑問点を解消しておきましょう。分からないままにしておくと後で痛い目を見ます。

基本的にこの項目がスッキリしている物件ほど買受後に揉める可能性が低く、逆にゴチャゴチャしている物件は面倒なことになる可能性が高いです。

自信が無いのであれば、ここが「なし」となっているか「隣地との境界が不明確である」「滞納がある(少額)」程度の軽めな物件だけを狙うようにしましょう。

さいごに

ここまでが物件明細書の内容になります。

ページ数は少ないですが、物件明細書には重要な情報が凝縮されています。

一言一句見落としが無いようにしっかり読み込むようにしましょう。

 

さて今回の記事はいかがだったでしょうか?

「専門用語が多すぎて混乱してきた」という方にはこちらの本がオススメです。

こちらは競売不動産取扱主任者試験の公式テキストとして書かれた書籍です。

『はじめての競売』が初心者にもわかりやすい競売の指南書だとしたら、こちらは競売に関する情報が網羅されている解体真書です。

巻末には競売用語集がまとめられており辞書代わりにもなるので、今後継続して競売不動産投資に取り組んでいくつもりの方は是非この一冊を手元に置いておきましょう。

 

次回は3点セットの第2章「現況調査報告書」の読み方を解説します。

お楽しみに!

3点セット物件明細書編②
競売の3点セットの読み方を徹底解説【現況調査報告書編】今回は競売の3点セットのうち「現況調査報告書」の読み方を詳しく解説します。 前回解説した「物件明細書」同様、こちらも重要な...

POSTED COMMENT

  1. ガジ より:

    いつも永久保存版級のブログをありがとうございます。
    ステップ0超えたらめっちゃハードル上がりますね‥理解できるまで反復熟読させていただきました。

    おやつさん級の人ですと、いくつかの地方の大家コミュニティに所属していると思いますが、実際地方の大家ってどんな方が比較的多いのでしょうか?年齢、職業、ネット関連スキルなど、参考までに聞いてみたいです。

    • おやつ より:

      いつもコメントありがとうございます!
      専門的な分野も出来るだけわかりやすく解説できるよう精進します。

      ご質問に関してですが、大家のコミュニティには全く所属していないので分からないです。
      今までずっと一人でやって来たもので…
      お役に立てず申し訳ありません。

  2. ガジ より:

    返信ありがとうございます。一人でここまでやってこれてるとか、やはり仙人であったか!
    因みに入社1年目からやってた副業って・・動画配信ですか?色々振れ切ってるマルチ才能に感服します。

  3. けい より:

    おやつさんはじめまして!
    改造ロマサガ3時代から動画楽しませて頂いてます!
    いつも凄まじいクオリティの動画ありがとうございます!

    本ブログを拝見し、不動産投資に興味を持ちました。
    モロに初心者質問で恐縮ですが以下教えて頂けるとありがたいです!

    ・おやつさんにとって物件の住所(自宅からの移動時間)は購入検討時の評価基準に入りますか?

    ・検討から購入、運営が安定するまでに物件に何回程度足を運んでいますか?

    ・家賃滞納や退去してもらえない等のトラブルはおやつさんの体感で構いませんので何%くらいの確率で発生していますでしょうか?

    よろしくお願いします!

    • おやつ より:

      コメントありがとうございます!
      ご質問についてですが、
      ・おやつさんにとって物件の住所(自宅からの移動時間)は購入検討時の評価基準に入りますか?
      入ります。やはり遠方だと調査や管理が面倒になるので入札価格をその分低めにしたりします。

      ・検討から購入、運営が安定するまでに物件に何回程度足を運んでいますか?
      1回か2回が多いです。
      まずは調査時に1回(行く時と行かない時がある)
      物件を落札したら現地に行って、落札後の手続き、管理会社探し、修繕の見積もりを一度に済ませます(これは毎回)
      管理会社を付けてしまえばあとはリモートで何とかなります。
      あとは売却時に現地に近い金融機関で決済することが多いですね。

      ・家賃滞納や退去してもらえない等のトラブルはおやつさんの体感で構いませんので何%くらいの確率で発生していますでしょうか?
      多少の家賃滞納ぐらいなら10%ぐらいの確率で発生します。
      滞納が発生してもすぐに督促すれば、次月にまとめて振り込まれたり、分割で振り込まれたり、そこまで大きな問題にならないことがほとんどです。
      督促は管理会社や保証会社がオーナーの代わりにやってくれます。
      保証会社をつけていれば滞納が発生しても6カ月程度は家賃を立て替えて払ってくれます。

      落札後に所有者に退去してもらう場合、明渡しまでに2,3カ月の猶予を設けて、その間は建物を無償で使わせてあげます。
      この条件で今まで特に揉めることなく皆さんに退去してもらっています。
      また、可能であれば室内の動産は明渡し日までに撤去してもらうようお願いしています(8割ぐらいの方は撤去してくれます)

      賃貸中の入居者を退去させなければならないという事態になったことはこれまでに2件しかありません。
      全体の1~2%程度です。そのときも対応は管理会社にお任せしました。
      どちらも訴訟まではいかず退去に応じていただき、片方は親族から滞納家賃や退去後の修繕費を支払っていただきました。
      (もう片方は親族がいなかったので修繕費は諦めました)

  4. t-z より:

    はじめての競売がどこにも売ってないので今回紹介されてる本買いましたがやはり辞書的な使い方になりますよね
    以前に知識だけつけて頭でっかちになるなと書かれてましたが額や手間を考えるとやはり気軽には始められず本読んでばかりです
    おやつさんは実際に不動産に手と金を出すまでにどれくらい勉強しましたか?

    • おやつ より:

      結構前のことなので正確には覚えていないのですが、不動産投資をしようと勉強を始めてから3ヶ月~半年ぐらいで最初の入札をしたかと思います。
      1棟目を落札できたのは、最初の入札をしてから10カ月後でした。

  5. けい より:

    おやつさん返信ありがとうございます!
    ご多忙の中ここまで丁寧に説明頂けるとは・・・。
    ご回答内容非常に参考になりました!

    ①、②
    やはり物件に足を運ぶ以上住所は重要と言うことですね。
    ようやく勉強始めたばかりなのでかなり先になりそうですが、選ぶ際は私も評価基準に含めたいと思います。


    リアルな体験談を詳細に説明頂き、非常にイメージ湧きました。
    問題が発生する割合はそこまで高くないこと、管理会社に任せることができること安心しました。
    この点が心理的にハードルになっていたので、より勉強するになりましたw

    今後もブログ更新頑張ってください!勉強させて頂きます!
    そして密かにゲーム動画の新作も待ってます・・・!

  6. Alola より:

    文章が読みやすいし、参考文献のせてくれる所も有り難いです。

  7. 17 より:

    ブログ更新ありがとナスです。
    少しずつ難しい内容になってきたので脱落しないようにがんばります。

    記事とは直接関係ないのですが「よくある質問」ページを作成して、各記事の末尾に付けとくと良いかなぁとか思ったりしました。(すでに検討中の場合はすみません🙇

    次回更新も楽しみにしてます!

  8. Wolpertinger より:

    記事を読ませていただきました。
    3点セットの存在は気にしていましたが、どの部分をどう理解すればいいかという点が全く分かっておらず、読んでいる間も目が泳ぎっぱなしでした。
    それが今回の解説のおかげでようやく読み込む為の土台の知識を作ることができ、興味を持ちながら書類に接することが出来そうです。
    次回、現況調査報告書の解説についても、是非読ませていただきたいです。

  9. クエラ より:

    おやつさま
    ブログを見て競売に興味を持ちました!ありがとうございます。質問の回答で、物件に足を運ぶのは1-2回と仰っておりますが、それはリフォームした場合も含めておりますか?わたしの推測として、リフォームが必要な格安物件だと何度も足を運ぶ必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

    • おやつ より:

      コメントありがとうございます!
      リフォームが必要な物件でも現地に足を運ぶのは1,2回です。
      リフォームは全て業者にお任せしているので、最初の訪問で業者に見積もりを取ってもらって、工事完了後は写真で報告してもらっています。

  10. クエラ より:

    おやつさま
    お疲れ様です。返信していただきありがとうございます。
    全て任せられる業者さんがいらっしゃるというのは心強いですね!競売サイトでボロ物件を見ましたが、修復にだいぶお金が必要な感じがしました。あまりにも古いだけかもしれませんが、そのうちで構いませんのでリフォーム費用の内訳などもご教示いただけますと幸いです。ブログ応援しております。

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